涙(へし燭SSS・ワンドロお題)*大太刀長谷部×織田時代光忠

黒い着流しを引き摺って廊下を歩く綺麗な一振り。
「光忠」
「国重様」
ぱっと顔を輝かしてこちらに来る光忠の頬を撫でる。
「主がお前を戦場に連れていきたいと言っていた」
「本当ですか?!」
「ああ。お前の真の誕生、だな」
紫の目を丸くする光忠に笑いかけた。
余程驚いたのだろう、ただただ呆けている。
「お前の誕生を喜ぼう」
「国重、さま・・・」
頭を撫でた途端、呆けていた光忠の目から雫がつうと流れ落ちた。
「どうした?」
「え?あれ??」
戸惑った様にぱちぱちと瞬きする光忠の頬にほろりと雫が流れる。
「国重様」
ほろほろとそれを流しながら彼は問うた。
「これはなんでしょう」
「これ?」
「今この光忠に流れる水です。痛くはない、のに」
「そうか」
不思議そうな光忠の目から次々と流れるそれ。
そっと拭って長谷部は笑った。
「これは、『なみだ』と言う」
「なみだ・・・」
「哀しい時、嬉しい時、怒る時、様々な時に流れるものだ。お前のなみだはどれだ?」
問い掛けると光忠はややあって見上げる。
「嬉しいのです、国重様」
くしゃりと笑って彼が言った。
光忠が初めて流したなみだは、この世に生を受けた事を喜ぶなみだ。




「あ、長谷部くん」
「燭台切?」
ふわふわと笑って光忠がこちらに駆け寄ってくる。
「どうした」
「?お出迎えだけど」
にこりと笑う彼。
「そ、そうか」
それが眩しくてふいと顔を背ける。
「お帰り。長谷部くん」
「ああ。・・・そうだ、土産だぞ」
「え?」
きょとりとするかれにそら、と万事屋で買ったそれを差し出した。
包みを開き、団子屋で買ったそれを一つ、口に放り込んでやる。
咀嚼する好きだろうと言えばぽかんとこちらを見。
「えと、長谷部くん」
「何だ?」
「これ、何?」
「・・・?ずんだだが」
疑問の意味が分からずそう言えば彼は困ったように、あのね、と口を開く。
「これ、鶯餡だよね?」
「なっ」
「えっ、本気で間違えたの?」
長谷部の様子を見て本気だと思ったのだろう、ふるふるとその肩が震え出した。
「ふ、はは、あはは!」
珍しく大きな声で笑いながら光忠は涙をぬぐう。
「ああ、おかしい」
「泣くまで笑う奴があるか」
「だって」
くすくすと光忠が笑う。
綺麗だと思った。
2度目の涙は、彼がこの世界を楽しんでいる所以の涙。



「光忠」
そっと眠る光忠の頬を撫でる。
ゆっくりと金の目を開き、長谷部を認めてびくりと肩を震わせた。
「はせ、べ、くん」
怯えた様にこちらを見て、途端にぽろぽろと泪を溢す。
この部屋に光忠を閉じ込めて、彼はどれほどに泪を流し続けたろうか。
長谷部もそれは分からない。
ただその泪も綺麗だと、そう思う。
長谷部に、長谷部だけに見せる、泪。
それがとても愛おしいと。
「いい加減俺の物になれ、光忠」
「・・・。・・・ねえどうして分かってくれないの」
ほろほろと光忠は泪を溢す。
分からないのはこちらの方だ。
何故彼は泪を流すのだろう。
泪を舐め取ればひっと息を呑む。
また新たに雫が溢れ出た。
3度目の泪は、自分を理解しないという怒りと悲しみの泪。


扉の奥から彼の泣き声が聞こえた。
ゆっくりと扉を開けると、ふわりと振り向く。
「光忠」
「長谷部くん」
泣き腫らした目を眇めて笑う光忠。
近付いてそっと抱きしめる。
新たなそれを溢れさせる光忠の頭を撫でて紫と金の目を見つめた。
「俺はここだ」
「うん」
「光忠」
「・・・はい」
顔を上げる光忠の目に口付けを施す。
「もう、泣くな」
「長谷部、くん」
「お前はもう実践刀じゃない。そうだろう」
「・・・僕、は」
「お前は、俺だけの美術品であればいい。俺の、傍にいてくれないか」
「・・・う、ん」
どろりと濁った眼に、溢れる綺麗な水。
透き通るような肌に流れる1筋のそれ。
最後のナミダは、自分を・・・刀としての己を失った悲しみと『  』のナミダ。

リアルへし燭が可愛い話(長谷部先生と長船先生ノンフィクション)

・水やり当番だった長船先生、外が寒すぎたのかネックウォーマーにジャージを一番上まで上げて両手をこすりながら自分の息で暖めてた。
長谷部先生が来た途端笑顔になって「これ、お願いします」と当番表を渡す(長谷部先生も笑顔)

・玄関ホールで長船先生と会話してると2階から降りてきた長谷部先生が長船先生の隣に。私たちとの会話に入る(昨日)
・生徒を待って長船先生の少し後ろでぼおっとしてると長谷部先生が長船先生の隣に。距離が近い。

・長船先生が先に帰った日。目の前で仕事してた長谷部先生がぼそっと「うわっ、行かれんな」(本当は大阪弁)と言う。

・ミルク入りでしか珈琲飲めない長船先生の机の上にインスタント珈琲の瓶。

・長谷部先生のエプロンが白、長船先生のエプロンが黒(ジャージは最近長谷部先生が橙色で長船先生が水色)

・長船先生が学年会(2年生の先生だけでする会議)でした業務連絡と学部会(高等部、3学年の先生が集まってする会議)で別の先生がした業務連絡とで内容が食い違っていた時に日本号先生が「後で長船に突っ込もう」と呟く。斜め後ろに長谷部先生。


---
・持ってきたチョコパンやお菓子を両手で持って頬張る長船先生と飴を少しずつ噛んで食べる長谷部先生

・長船先生が担当してる班で明日の調理実習がパンケーキになった時の話。
先輩(女性)「パンケーキとホットケーキの違いって何やと思う?」
私「並んでも食べたいのがパンケーキじゃないですか?!」
長船先生「ふわってして生クリームとか乗っけて食べるのがパンケーキだと」
長谷部先生「一回食べたら胃がもたれてもういいやって思うのがパンケーキですかね」
私「www」
先輩(女性)「長谷部wwwおまw」
長船先生「オシャレな人に怒られますよ(くすくす」
長谷部先生「俺、アパレルだったからな?」(大阪弁)
先輩(女性)「関係ないやろwwww」

(正解:砂糖が入ってるか否か)
(*長谷部先生が教師やる前に勤めた先がGU)


・朝、他学部の先生と冬の予定の話になって
私「あ、先生忘年会行きます?」
他学部の先生(女性)「一応行きますよー。桜井先生は?」
私「行きますー、一応」
私の後ろに居たはずの長谷部先生と私の横に居た長船先生
長谷部先生「忘年会行かんの、俺らだけらしいな」
長船先生「そうみたいですねぇ」
長谷部先生「人数結構凄いことになりそうだが」
長船先生「この学校何人くらいいてるんでしょう?」

・スノボが得意、「冬は山にこもります」な長船先生vs「スキーもスノボも嫌い、何が楽しいのかわからない」長谷部先生

長谷部先生×長船先生(現パロ

*うちの職場にいるリアルへし燭が仲良すぎて書いた、後悔も反省もしてない
・長谷部先生→178p、27歳、社会専科の男性講師。元野球部。爽やか系。9月からの勤務。
・長船先生→169p、22歳、体育専科の男性講師。元陸上部。おっとり系。6月からの勤務。
ーー
「傘の忘れ物無いー?」
この飲み会の幹事の先生がそう呼びかける。
そういえば忘れていたとビニール傘を取りにそちらへ向かった。
「桜井先生傘は?」
「持ってないです!」
なんでこの女性はどや顔なんだと突っ込みたいのもそこそこに自分の傘を持って彼の隣に戻る。
「雨まだ降ってますかね?」
にこにこと俺に聞くのは長船光忠先生だ。
長船先生は大学出たての22歳で、初めての職場が此処らしい。
支援学校なんて何が何やらの俺とは違って障がいのある弟がいるらしいからその辺の順応は早かったのだろうけど。
俺とて前任校に行っていなければ此処まで早く対応出来ていなかったかもしれない。
ちなみに今日は学習発表会・・・所謂学芸会の打ち上げだ。
以前にも歓迎会と称した飲み会があったらしいが行けず、それからずっと楽しみにしていた。
「もう大丈夫だろう。降っていても駅まではすぐだ」
「あ、でも家までバスで10分、歩きで15分かかるんですよ」
ふわりと笑う長船先生。
普段からおっとりした先生だとは思っていたがお酒が入るとこんなに良く笑うとは知らなかった。
「鶴丸先生、環状線グルグル回っちゃだめですよー」
店を出た瞬間、あはは、という声が聞こえる。
「いやいや、長船君がいるから大丈夫だ!」
途端に長船先生の肩を抱く・・・隣のクラスで彼の相担でもある鶴丸先生。
「えー、荷が重いなぁ」
言いながら長船先生がくすくすと笑った。

声(へし燭SSS・ワンドロお題)*大太刀長谷部×織田時代光忠

ずるずると黒い着流しを引きずった少年が此方の姿を認めて破顔する。
「国重様!」
着流しと同色の、黒髪をふわふわと揺らし駆け寄ってくる・・・彼は号の無い光忠の一人。
一番末の『光忠』であった。
「どうした、長船の子よ」
「いえ!国重様のお姿が見えましたもので。・・・何をなさっていたのですか?」
「虫の声を聞いていた」
首を傾げる光忠を膝の上に乗せる。
口に指を当て、目を閉じるよう指示すると不思議そうな顔をしながらも紫色の目を閉じた。
鈴の鳴るような声が響く。
「これが虫の声ですか?」
「ああ。これは鈴虫だな」
「綺麗な声なのですね」
「お前の声の方が綺麗だがな」
黒い髪を撫でてやるとくすぐったそうに笑った。
ころころと、愛らしく。
もし彼が成長してしまえばこの声は聴けなくなるのだろうかとふと思う。
それは・・・大層勿体なく思った。
変化して尚それは美しいものだとは思うけれど、長谷部は今の彼を抱いていたいと、そう思ったのだ。
「・・・しかし、お前が強くなれば、この声は今後聞けぬだろう。お前の声が聞けなくなるのは寂しくあるな」
「?何故です?」
「声と言うのは成長と主に変化する。お前のこの声はこの姿の時だけだ」
長谷部のそれに光忠は大きく目を見開いた。
「声と言うのは変化するのですか!」
「ああ、そうだ」
頷き、だから寂しいのだと言う。
「変化し、その声は常忘れてしまう。そう言うものだ」
「この光忠、国重様の声は忘れませぬ」
「そうか」
「はい!」
光忠が笑う。

人は声から忘れていく生き物だと言う。


神である我々は果たしてどうなのだろうか。


・・・この澄んだ声を、愛らしい声を、永遠に覚えていたいと思う。

「国重様」
ふわりと優しい光忠の声が耳に届く。
「もう一度だ」
「え?」
「もう一度、呼んでくれ」
きょとりとした光忠が可愛らしく笑った。
「国重様が望むのであれば」


忘れてしまう可能性があるのなら、何度でも聞けばいい。
そうすれば、忘れないから。

その日、長谷部は夢見るまでずっと、彼の声を聞いていた。

遠征(へし燭SSS・ワンドロお題)

「今日の遠征内容は木炭150、玉鋼200、冷却材200、砥石250を持ち帰る、以上だ」
長谷部が指示書を読み上げれば、各々の返事が返って来た。
適当に人数を振り分け、見送り、後ろを振り返る。
「俺たちも行くぞ、燭台切」
「了解」
くすりと光忠が笑んだ。
本来、部隊は揃って遠征を行わなければならない。
しかし、それでは効率が悪いと長谷部が率いる部隊はこの方法をとっているのだった。
同じ隊の大和守に頼まれたから、というのもあるのだけれど。
大体二人組になり、大量に落ちていそうなところに向かう。
そうして時間になれば集合し、揃って帰るのだ。
「そういえば最近は遠征ばかりだね」
「不満か?」
光忠のそれに長谷部が返せば、まさかと彼が笑う。
「主のいう事に不満はないよ。・・・君とこうしてゆっくり出来るし」
「これは任務だぞ」
嬉しそうな光忠に長谷部はそう言ったが、それは長谷部も同じだった。
本丸に帰ればそれなりにお互い忙しく、最近では顔を合わせる暇もない。
だからこうして無理矢理時間を作り、二人きりになれるようにしたのだ。
「分かってるよ。・・・あ、木炭」
「でかした」
光忠の声に長谷部は袋を広げる。
二人で他愛もない話をしながら歩き回り、素材を見つけては袋に入れた。
そんな作業を何時間か続け、袋がいっぱいになった・・・そんな折。
「・・・長谷部くん、あれ」
「うん?」
光忠が一点を指さす。
それに目を凝らすと一羽の鳩が文を携えて降りてきた。
「鳩?」
「・・・これに集めた素材を入れろという事らしい」
「ふうん?急ぎかな」
政府からそんな鳩が派遣されたのは聞いていたからそれかと光忠そう言いつつ集めたそれを入れる。
「・・・それから」
「うん?」
文を見せ、長谷部は笑った。
「主は御見通しらしいぞ」
「え?」
きょとんとする光忠は文を見・・・少し照れたように笑う。
文には『たまにはゆっくりしておいで』と書かれていた。
その下にはここから程近くの茶屋の地図がある。
其処へ行けという事だろう。


「行くか」
「うん」

これもまた遠征だと、笑って。

二人は手を取り、足を進める。


鳩がそんな二人を見てから、飛び去った。

ファンタジー(へし燭SSS・ワンドロお題)*クロスオーバー

戦況は切迫していた。
最初はいつもの魔獣退治だった・・・はずなのに。
突如黒い靄が現れ、レイナスとロナードを飲み込んだ。
「ロナード!くそ、『バーニングコンボ』!」
「レイナスさん!・・・詠唱破棄、『バルザライザー』!」
「レイナス!ロナード!!・・・きゃああ!!」
必殺技や攻撃魔法を仕掛けるも間に合わず、白い光が辺りを包む。
「は?」
「え?」
閃光が消えた後、そこにいたのはレイナスとロナード・・・ではなく。
レイナスに良く似た榛色の髪の青年と、ロナードに良く似た黒髪の青年であった。
「おい、燭台切これはなんだ!」
「僕に聞かれても分かるわけないだろ?!大体部隊長は君じゃないか!」
「俺が知っている訳がなかろう!」
「・・・あのぅ」
ぎゃんぎゃんと言い合う二人に声をかけたのはラナである。
「ここはクラウディア、空の上よ」
「もっと言やぁ船の中だな」
「そ、空?」
「船?」
ザードのそれにぽかんと二人が言う。
どうやら言葉は通じそうだ。
それにほっとしたのか、ラナがきょろきょろと辺りを見回す。
「レイナスとロナード何処行っちゃったんだろ?」
「まあ、あれですね」
それに、甲板からどす黒い靄を指差してにっこりと笑うヴァイス。
「エアゲートが開いたんでしょう」
「エアゲート便利だな?!」
ヴァイスのそれにザードが突っ込む。
冗談ですと笑うヴァイスに二人はぽかんとしきりだ。
「冗談かよ。あ、おれはザード!」
「あたし、ラナ!よろしくね!」
「私はヴァイス。ヴァイス=ランドシーカーです。それで、貴方たちは?」
にこと笑うと慌てたように黒髪の青年が話し出した。
「ええと僕らは刀の付喪神でね・・・」
「刀?剣とは違うの?」
黒髪の青年が言うそれにラナがきょとりとする。
「まあ厳密には違いますね。武器には違いありませんが」
ヴァイスは答えながら武器を扱った書物のページを開いた。
覗き込み、ラナとザードがああと言う。
「ライの武器がそんなだったねー」
「あーそういやぁそうだったな」
「ライ?」
ラナとザードのやり取りにきょとんとする黒い髪の青年。
それに、ああとヴァイスが笑う。
「ロナードさんの従姉・・・とだけ言っておきましょうか」
その答えに榛色の髪の青年は少し表情を歪めた。
「あたしにもお姉ちゃんがいるんだよ!名前はニア、後で紹介するね!」
「そうなんだ、楽しみにしてる」
ラナのそれに、にこ、と黒髪の青年が笑う。
なるほど、ロナードとは違って表情は豊からしい。
「ね、長谷部くん」
「あまり興味は無いんだがな」
「もう、またそんな・・・」
振り返った彼は、榛色の髪の青年の口振りにくすくすと笑った。
榛色の髪の青年はレイナスより無愛想のようだ。
「自己紹介がまだだったね。僕は燭台切光忠。こっちは・・・」
「・・・へし切長谷部、だ」
自己紹介をする二人。
どう見ても性格はレイナス、ロナードには似ていない。
しかし、この既視感はなんだろうかとヴァイスは首を傾げた。
彼らの説明によれば、彼らは人ではなく、武器そのものらしい。
別の世界では武器には神がやどり、それを具現化して戦う、そんな戦闘方法があるようだ。
戦闘にいくにはこちらでいうワープを使うらしく、どうやらその時に起きた誤作動とこちらの何かが奇跡にかち合ったらしかった。
ヴァイスの考えが正しければ、レイナスとロナードは彼らの世界にいるのだろう。
あまりその辺は心配もしていないのだけれど。
「わっ」
ぐら、とエアシップの揺れと共に黒髪の青年こと光忠の体が揺れる。
それを支えたのは榛色の髪の青年、長谷部だ。
「ありがとう、長谷部くん」
「構わん、転けるなよ」
「そんな無様なことしないよ」
「どうだか」
二人のやり取りにヴァイスはおや、と笑う。
なるほど既視感はこれか、と。
ふ、と頭上が暗くなる。
見上げれば巨大な魔獣がこちらに標準を合わせていた。
どうやらこれが大元のボスのようだ。
「出やがったな。おい、あんたら、ちょっと後ろに下がってー・・・」
「・・・。・・・これは物理攻撃は通るのか?」
敵を睨み、声を掛けようとしたザードを遮って長谷部が問う。
「え?うん、まあそりゃあ」
「なるほど。行くぞ、燭台切」
「はいはい、ご指名かな?じゃあ期待には応えないとね」
刀を抜いてにやりと笑う長谷部に、光忠もくすと笑って大きな刀を抜いた。
「圧し切る!!」
「格好良く決めたいよね!」
それぞれが駆け、魔獣に刀を振り下ろす。
「・・・おお」
その様子をぽかんと見つめるザードとラナにまたヴァイスがおやと笑った。
先に我に返ったのはラナの方で、怪我をする彼らに声を掛けようとする。
が、耳も貸さず戦い続ける彼らに、ラナは次第にふるふると震え出し。
「・・・。・・・『星屑の、怒り』っっっ!!!!!」
閃光が降り注ぎ、魔獣は塵と消えた。
「は?」
「え?」
二人が振り向く。
恐らくその目に映るはわなわなと震える少女の姿。
「・・・おい?」
「え、えと、ラナ、ちゃん?」
「・・・あたしの話を聞けぇええ!!!」
「おま、ちょ、それ色んな意味で危ないから!落ち着け、ラナ!!」
再び大技を繰り出そうとするラナをザードが必死で止める。
それを避けつつヴァイスは甲板の扉に手を掛けた。
引きつった顔で、少女の攻撃を避ける二人に心の中で手を合わせる。
「もうすぐ我々の拠点に着きますよ」
恐らくたぶん聞こえていないだろう彼らに声をかけ、ヴァイスは無線を手に取った。
現情報を報告すべく。





「・・・どうすんの、あれ」
ザードが呆れたように言った。
光忠はラナやニアと厨房だし、長谷部はライに連れられてカイゼルシュルト軍の指揮に行くらしい。
レイナスとロナードがいなくなったことは確かに事案だけれども、代わりに彼らがいるから何とか誤魔化されるだろうということになった。
仲間が誰も二人を受け入れない、と言わなかったことも大きい。
特に混乱もなく受け入れるから果たして自分たちのパーティーは以前からこうだったろうかと思ってしまうほどだ。
長谷部は好戦的なようで、レイナスより統率の取れた軍になるのではないかとヴァイスは思っていた。
光忠は光忠でよく食事番を任されていたらしいのでこちらも適任ではないかと思う。
実際、見知らぬ土地の作物だろうに作ってくれた料理は絶品だった。
「まあいいんじゃないですか?」
くすくすとヴァイスが笑う。
見つめるのは『彼ら』によく似た二人だ。
「そりゃあやることは変わらんけどさぁ」
「いえ、そうではなく」
「は?」
きょとんとするザードにヴァイスはまた笑った。


「私たちもきっと彼らも・・・『ファンタジー』の一部でしかありませんからね」


ヴァイスの声は風に溶ける。
レイナスとロナードに似た、長谷部と光忠は確かに彼らとそっくりだった。
長谷部と光忠がレイナスとロナードの武器を具現化したものだといっても信じてしまうくらいには。

性格より容姿より、何よりそれはファンタジー(非現実)



(そもそも、同性同士の恋がファンタジー(妄想)でしかないじゃないか!)

共有/半分こ(へし燭SSS・ワンドロお題)

厨房に行くと珍しく光忠が大机の前に腰掛け、ぼんやりと宙を見つめていた。
「・・・燭台切」
「・・・。・・・え、あ、長谷部くん?!」
とん、と肩を叩くと驚いたように彼はこちらを見る。
「どうした。具合でも悪いのか?」
「ううん、何もないよ」
長谷部の問いににこりと笑い、光忠は取り繕う様にして立ち上がった。
「今何時?」
「3時だ」
「じゃあそろそろおやつの時間だね」
いいものがあるよ、と光忠が言う。
戸棚から出してきたのはこの前万事屋で購入した菓子だった。
「待ってね、お茶入れ・・・」
「待つのはお前だ」
笑って、長谷部から離れようとする彼を無理やり座らせる。
鍋でお湯を沸かし、彼がやるのと同じように珈琲を淹れた。
自分はそのまま、光忠には牛乳を入れて前に置く。
「あ、の・・・?」
「ほら」
「え?」
「半分だ」
先程光忠が出してきた菓子を半分にした。
彼はどうも無理をする衒いがある。
しかもそれを隠そうとするのだ。
嘘が下手なくせに。
少し顔を顰め、ぽかんとする彼に「俺にも寄越せ」と言ってやった。
「お前が何を無理しているかは知らん。が、お前が嫌なもの全てを背負い込む必要はないだろう」
「長谷部、くん」
「お前の辛さも、お前の背負っている物も全て、この菓子の様に半分に出来たらと、そう思うが?」
菓子を差し出しながら長谷部は言う。
驚いたように目を見開き、それからふわりと破顔した。
「そういうところ、ずるいよねえ」
「何がだ」
「うーうん、何も」
くすくす笑って、それを受け取る。
その腕をぐっと掴み、長谷部は光忠に笑いかけた。
え、という表情の彼に触れるだけの口付けを施す。




良い事は二人分



悪い事は半分


二人で共有しよう



(悪い事は全て背負い込んでしまうお前を




全て俺のモノにしたい、それは黒く淀んだ独占欲)

黒田サンド

「日の本一の槍こと、日本号。只今推参」
ぶわりと桜が舞った。
目の前の部隊に向かってにやりと笑いかける。
「あんた、俺が来るまで何杯飲んだんだ?」
呆れた顔をする面々の中で一人、くすりと笑う美人が、いた。
「初めまして、日本号さん。僕は燭台切光忠。この部隊の隊長です。・・・僕はお酒強くないんだけど・・・本丸にはお酒強い人もいるから、楽しめると思いますよ」
「ほお、そうかい」
ふわりと金の目が眇められる。
差し出された手を握って、俺は笑った。
・・・へえ、この時代も中々楽しめそうだな。


美人こと燭台切光忠は刀としての実力もさることながら、どうやら器量も気立ても良い刀らしい。
「これどうぞ」
「お、わりぃな」
「いえいえ」
おつまみを一品皿に乗せてそれを差し出す燭台切に言うとやつはにこにこと笑った。
「お前さんもどうだ、一杯」
「・・・う〜ん、僕は、止められてるから・・・」
杯を持ち上げればやつは困った笑顔で言う。
ふぅん?
実践に支障が出るとかかね。
それを聞けば「みっともない顔するから駄目だって、長谷部君が」と言った。
長谷部くん?
「そういやぁ此処にはへし切長谷部もいるんだったか」
「はい。今は遠征に行ってますけど」
立ち去ろうとした燭台切に言えばやつはにこと笑ってそう答えた。
へえ、黒田のお坊ちゃまもここじゃあきっちりしてるって訳か。
「お先に失礼しますね。日本号さんも早く休んでください」
「あァ」
ふわりと笑う燭台切に手を振る。
数時間、月を見ながらちびりちびりと酒を嗜み、本丸から声が聞こえなくなった頃、漸く俺はふらりと立ち上がった。
向かうは自分にと割り当てられた部屋・・・ではなく。
から、と襖を開けた。
すやすやと寝息を立てる燭台切に覆い被さる。
一目見た瞬間、こいつを欲しいと思った。
綺麗な刀。
長船工が作り出した光忠の一振り。
白い鎖骨に口を寄せ・・・痕を付ける。
途端、ふわりと金と藤の目が開いた。
ぼんやりとしたそれに笑いかけようとしたところで。
「・・・長谷部、くん・・・?」
とろんとした声で問いかけられるそれ。
図らずも知ってしまった、事実。

・・・ああ、この可愛いのアイツのか。

「残念ながら長谷部じゃ、ねえなあ?」
「・・・?!!日本号さん?!」
「おう、悪い。部屋が何処か分からなくなった」
がばりと身を起こす燭台切にしれっとそう言うとやつは「槍部屋は反対方向ですよ」と笑って見せた。
「そうか。悪いなあ、起こして」
「いえ。・・・おやすみなさい」
にこと笑う燭台切は言外に「出て行ってくれ」と言っているようで。
俺も小さく笑い、部屋を出る。
己の部屋に戻り、布団に入ったところで廊下の方から声が聞こえた。
『ちょ、っと・・・!痛いってば、ねえ、長谷部くん!』
『煩い。この痕を付けたのが何処のどいつかは知らんが・・・徹底的に躰に聞いてやる・・・!』
『違うっ、これは、あの、日本号さんが・・・!』
『・・・日本号?・・・ますます躰に聞く必要があるな?光忠ァ?』
『ひっ、ちょ、やだって、長谷部くん・・・!!』
聞こえるそれにくつくつと笑う。
・・・あの黒田のお坊ちゃんも、所詮は織田の刀だったって訳か。

なあ長谷部よ。



ちょっとくらい俺に貸してくれたっていいじゃねぇか、なあ?

くりみつ

秋の気色漂うある晴れた日。
大倶利伽羅は落ち葉がひらひらと舞う木の下でぼんやりと佇んでいた。
時折ひょこりと身を乗り出してはすぐに引っ込める。
何回か繰り返した後、目の前から歩いてくる眼帯の青年に手を小さく上げた。
驚いたように立ち止まる彼・・・燭台切光忠に大倶利伽羅は歩み寄る。
「大倶利伽羅。どうかした?」
きょとりと目を瞬かせる光忠に大倶利伽羅は何でもない様に告げた。
「遅いから迎えに来た」
「・・・あれ?そうなの?」
そんなに遅いかなぁ、と言いながら慌てる彼が可愛い。
光忠は短刀ではなく寧ろ太刀と言う部類だが、おっとりとした彼は可愛いと表現するのが妥当だろう、と思う。
「ついでに追加の買い物して来いと」
「追加?」
「ああ。食後の甘味を買って来いとのことだ」
こてりと首を傾げる光忠に主からの紙を見せた。
それに目を滑らせた光忠は小さく笑って「了解」と言う。
「付き合ってくれる?大倶利伽羅」
「構わん」
「ありがとう」
にこり、と光忠が笑う。
ただそれだけでとても嬉しくなった。




「ええと、短刀たちはゼリーで、打刀の皆はケーキで・・・」
「早くしろ」
「急かすなら大倶利伽羅も選ぶの手伝ってくれるかい?」
むっとした表情で光忠が振り向く。
商品にばかり気が行っている所為であまりにつまらないから声を掛けただけなのだけれども。
「全員同じではいけないのか」
「まあ、そうなんだけど・・・っと、大倶利伽羅?」
籠を取り上げ、その中の商品を全て戻し彼の手を引く。
戸惑う光忠を無視し、大倶利伽羅は籠の中に枝豆、砂糖、白玉粉を入れた。
「え?ええ??」
「帰るぞ」
「待って、ちょ、っと・・・!!」
「俺は」
抗議しかける光忠の方を向き、大倶利伽羅は口を開く。
「アンタの作る物の方が好きなものでね」
「・・・それ、って」
「会計を済ませてくる。・・・先出てろ」
ぽかんとして固まる彼を置いて会計に向かう。
それを済ませて外に出ると手持ち無沙汰な様子で佇んでいた光忠がこちらを見てにこっと笑った。
「待たせた」
「ん。・・・じゃあ帰ろうか」
穏やかな様子で笑う光忠を見つめる。
彼の、秋の空と同じ色の目がふわりと溶けた。
何?と無防備な表情で首を傾げる光忠。
「何でもない」
不思議そうな彼にそう返し、手を握る。
「大倶利伽羅?」
「たまにはいいだろう」
驚いた表情の彼に言えば「うん」と小さく頷いて握り返してきた。
ふわりと心が温かくなる。
「ずんだ、作るの手伝ってくれよ?」
「ああ」
くすくすと笑う光忠は・・・言葉には出さないが可愛いなと、そう思った。






同じ空の下



彼と共に



皆の待つ本丸に戻る



これをきっとこう呼ぶんだろう





日常的幸福(いつものしあわせ)、と

おはよう(へし燭SSS・ワンドロお題)*大太刀長谷部×織田時代光忠

初めて見たのは主が刀を収集している倉庫の中だった。
付喪神として、初めて顕著した・・・長船の一振り。
「おはよう、光忠。長船の子よ」
「・・・?」
藤色の目をぼんやりとこちらに向けて不思議そうに首を傾げる。
細い腕を持ち上げ、己の喉元に少年の手を当てた。
「お、は、よ、う」
「・・・ぉ・・・?」
「お、は、よ、う」
「ぉ、あ、よ・・・?」
掠れた声で、同じように紡ぐ少年。
これが、彼が顕著し付喪神としてこの地に下りてから発した初めての言葉になった。
神として生まれ落ちた光忠に初めての「おはよう」を。


「光忠」
「・・・?・・・国重様!」
声をかけると不思議そうな顔をした光忠が振り向き、嬉しそうに顔を綻ばせる。
言葉を教えてから暫く。
顕著してから光忠に声をかけたのはあれ一度きりだった。
その後は人形のような光忠を見ているだけだったが気まぐれに戦場に連れ出したところ、彼は刀としての『本能』に目覚めたのである。
ずるりと黒い着流しを引き摺り、にこにこと笑う光忠の黒い髪を撫でた。
「何処へ行く?光忠よ」
「これから主の元へ参ります、国重様!」
「そうか」
「はい!光忠めははよぅ国重様のように強くなりたいのです!」
ふわりふわりと可愛らしい笑みを浮かべて言う光忠。
それに長谷部も小さく笑みを浮かべる。
「・・・おはよう、光忠」
「?・・・もう昼ですよ?」
きょとりと首を傾げる光忠に「初めて会う時はいつでもおはようだ」と教えてやった。
なるほど、と呟いた光忠がにこりと笑う。
「おはようございます、国重様」
藤色の目が溶けるようになくなった。
長谷部の、榛色の長い髪が風に揺れる。
神としての自我を持ち刀の本能である「戦いたい」という気持ちを持つ、光忠に2度目の「おはよう」を。



「・・・くん、長谷部くん!」
身体を揺り動かされ、長谷部は目を開ける。
目の前には人の姿を取り、心配そうに見つめる光忠がいた。
あの時代から暫く、刀剣男士として顕著された彼は紫の目を金に染め、眼帯をしていた。
小さかった体躯は長谷部よりも大きくなり、「燭台切」という号を受けた彼はそれ相応に強くなっていた。
「あ、やっと起きた。・・・疲れてるんなら布団で寝たらいいのに」
「・・・。・・・燭台切、今何時だ?」
「今?寅の刻・・・15時だよ」
「そうか」
くすくすと笑う光忠にそう返して長谷部は身体を伸ばす。
お茶入れようか、と光忠が笑顔で言った。
「ああ、頼む。・・・燭台切」
「ん?何?」
呼びかけるとこてりと彼が首を傾げる。
本丸の窓から入った風がふわりと長谷部の短い髪を揺らした。
「おはよう、・・・光忠」
「!・・・おはよう、長谷部くん」
驚いたように目を見開く光忠はややあってへにょりと破顔させる。
強さをものにし戦場で本分を全うする、光忠に3度目の「おはよう」を。


からりと襖を開ける。
腕の中でぐったりとする彼を布団に戻した。
裸足のそこについた泥を丁寧に落とす。
「・・・ぅ・・・」
ぼんやりと目を開ける光忠。
「ああ、起きたか」
金の目と、隠されていた藤の目に笑いかけるとそれが見開かれガタガタと震え出した。
「長谷部く・・・な、んで・・・」
「逃げたところで無駄だと言っただろう?」
囁いて彼の腿に口付ける。
歪んだそれは支配の証。
ひ、と怯える光忠に長谷部はにこりと嗤う。
「おはよう、光忠」
戦場で舞い実践刀として生きたそこから離され閉じ込められ美術品へと堕とされた、光忠に4度目の「おはよう」を。


からりと襖を開けた。
すやすやと眠る光忠の足はいつもと同じで綺麗だ。
ゆらりと笑みを浮かべて長谷部は襖を閉める。
「・・・ん」
「光忠?」
軽い声に振り向くとぼんやりと目を開けた光忠がそこにいた。
「・・・長谷部、くん」
「おはよう、光忠」
「・・・。・・・おはよ、長谷部くん」
ふわりと彼が笑う。
生きる事を諦めた目で。
闘う事を望まなくなった眼で。
光忠は笑う。
降り込んだ雪は黒く汚れていた。
待雪草の花が風に揺れる。
すっかり刀としての生き方を忘れ長谷部のものになった、光忠に5度目の「おはよう」と、初めての「    」を。