AKT108はおやつです!!!

RoseMenuett
桜井えさと
20210904
projectセカイカラフルステージ!feat.初音ミク非公式
東雲彰人×青柳冬弥
アキトトウヤハオヤツデス!
https://6.gigafile.nu/0919-b3e98fceee940d41b1f96d70b245e9232

君は僕らのうさぎさん!

RoseMenuett
桜井えさと
20210822
ENDROLL非公式
タバサ総受け

キミハボクラノウサギサン

RoseMenuett
ローズメヌエット

桜井えさと
サクライエサト

せがわ氏作品Webオンリー「ナニバショウ」
き6RoseMenuett
タバサ・マクニール


うさみみポンチョを被ったタバサさんの総受け本です。
ラッセル、情報屋、ドグマ、閑照、ウォルターとのほのぼの短編を纏めた、短編集になります。

司冬ワンライ・○○館(○○園)/初デート

その日、天馬司は緊張していた。
緊張などまったくしないタイプで、それこそワンダーステージのオーディションですらワクワクさえすれど、緊張はしなかった…のに。
「お兄ちゃーん?遅刻しちゃうよー?」
「わ、分かっている!」
妹である咲希の声に司は返す。
その時間は刻一刻と迫っていた。



さて、少し前に時は戻る。
その日、珍しく(と、本人が言っていた)学校に来ていた瑞希と廊下で会い、話していた時だ。
「ええっ?!司先輩、冬弥くんとデートしたことないの?!」
「そうだが…そんなに驚くことか?」
素っ頓狂な声を上げる瑞希に司は首を傾げる。
後輩である冬弥とは幼馴染で恋人だが、デートらしいデートには行ったことがなかったのだ。
たまに買い物に付き合ってもらったり付き合ったり、図書館に行くという冬弥に着いていったり、逆に冬弥がフェニックスワンダーランドに来たりはするが…約束をして、どこかに行くことは今までしてこなかったのである。
「いや別に司先輩たちが良いなら良いよ?でもなんかさぁ、寂しくない?」
「ほう、寂しい、とは?」
「んー、ボクも上手くは言えないけど…せっかくなら、恋人らしいこと?が出来るんだし、特別感を味わってもいいんじゃないかなーって」
「…なるほどな」
瑞希のそれに司は考え込んだ。
確かに、瑞希の言うとおりかもしれない。
よし、と呟き瑞希に礼を言うと司は駆け出す。
廊下は走るな!という教師の声が届くが気にしてはいられなかった。
「冬弥!!!!」
「?!司先輩…?!」
1年の教室には帰る寸前の冬弥がいて(ちなみに、嫌そうな顔の彰人と寧々もいた)司はホッとする。
「どうか、されましたか」
「いや…あのな」
心配そうな冬弥の手をぎゅっと握った。
そうして。
「週末、オレとデートしてくれ、冬弥!!」


司の公開プロポーズに嫌な顔を深めたのは彰人と寧々だけで、冬弥は、はい、と頷いてくれた。
だが、その日は用事があるらしく、その次の週になったのである。
…それが、今日、だ。
2人ともあまり行かない場所、ということで水族館に行く事になったのだが…約束をし、待ち合わせをして会うのは初めてで緊張してしまっていた。
「…いかんいかん!オレは冬弥の恋人…しっかりせねば…!」
「…司先輩?あの、お待たせしました」
ふわ、とした声がして司は振り向く。
そこには私服の冬弥が、いた。
「おお、冬弥!オレは待っていないぞ!」
焦った様子の冬弥に安心させるような笑みを浮かべる。
ホッとする冬弥の手を繋いだ。
「…先輩?」
「せっかくのデートだからな。いけないか?」
「…いえ、あの…嬉しいです」
柔らかく笑う冬弥に、司も釣られて笑った。
「そういえば…何故水族館だったんだ?」
チケットを買い、水槽のトンネルを潜りながら司は聞く。
今回のデート場所は冬弥のリクエストだったのだ。
「俺自身が行ったことがなかったのと…先輩と一緒に行ったら楽しいと思ったんです」
はにかんで言う冬弥が、キラキラした水槽の水に反射する。
デートに誘ってよかったな、と心からそう思った。


薄暗い室内と水面に反射するキラキラした、冬弥の表情が

ここにいる魚より何より美しいと…そう、感じた。



「冬弥!揃いのキーホルダーだ!一緒に買わないか?」
「…!良いんですか…?!」

ワンドロ・花火/見つめ合い

「ねーねー!花火やらないー?!」
きゃっほう!と楽しそうに店に入ってきたのはバーチャルシンガーであるリンで、途端に彰人は嫌そうな顔をした。
「…はぁ?なんで花火なんか…」
「えー!やろうよー?!キラキラして楽しいよ?!」
「だーから、高校生にもなってやらねぇっつー…」
「いいねぇ、楽しそう!」
ため息を吐く彰人に即答したのは杏である。
おい、と突っ込む彰人に、杏は、まあまあ、と笑った。
「だって、アンタ達は夏祭りに行ったし、こはねは臨海学校で海に行ってるんだもん。私も夏の思い出、的なことしたいし!」
「お前なぁ」
「私も、皆で花火したいなぁ!小さい頃にはやったけど…皆でやる花火はまた違うもんね!」
嫌そうな彰人に、こはねがにこにこと言う。
さっすがこはね!と杏が嬉しそうに抱き着いた。
「じゃあ早速準備しよ!リンちゃんも来るよね!」
「いいの?!行きたーい!」
「ふふ、じゃあ行こっか」
女子たちがきゃっきゃと楽しそうに計画し合うのを見て彰人は息を吐き出す。
こうなれば止められないのはとっくに知っていた。
…それに。
「…んで?お前は相変わらず花火とかやったことないのかよ」
「…そう、だな。耳にはあまり良くない、と花火大会には連れて行ってもらえなかったし、テレビもあまり見なかったからな。やっているのは知っていたが」
「打ち上げ花火はともかく…手持ち花火もか?」
「…手持ち、花火…」
きょとんとする冬弥に彰人は、あー分かった分かった、と手で制す。
花火に興味はないが…冬弥に綺麗なものを見せてやりたいなと、そう思った。


「…凄いな」
冬弥の目がキラキラ光る。
表情になかなか出ない分、彼の言葉はストレートなのだ。
パチパチと火花が弾ける。
「見てみて彰人、冬弥ー!二刀流!」
「おいバカ、レン!危ないぞ!」
楽しそうにレンがそれを持ってこちらに駆けてくるのを見、彰人は声を上げた。
冬弥が楽しそうに笑う。
「…彰人、火が終わっている」
「…ん?おお」
ちょん、と指摘され、彰人はそちらに目を向けた。
冬弥ばかり見ているせいで自分の花火を見ていなかったのである。
「…ほら、彰人」
古いのをバケツに投げ、新しく取り出すと冬弥が火を寄こした。
ん、と有難くそれを貰う。
シュウ、と音を立てた花火はオレンジ色の火花を散らした。
冬弥が持つ、青色のそれと混ざり合う。
思わず二人で見つめ合って…ふは、と笑った。
パチパチ弾けるオレンジと青の火花。
何となく…ぼんやりと、幸せだなと…そう、思った。
(花火より楽しそうな彼の方が美しい、なんて月並みな話!)



「見てー!!カイトすごいんだよ、ほら、六刀流!!」
「レン、待って待ってボクこれどうなってる?!」
「…あれは…良いのか…?」
「…ほっとけよ」

類冬ワンドロ・怪談話/きゅうり

「…怪談話…ですか?」
きょとんとする彼に類はにこりと頷いた。
「今度、お化け屋敷も絡めたショーをやるつもりなんだけど、文献は読みあさってしまってね。良ければ君が知っている話を教えてほしいのだけれど」
そう言えば冬弥は少し考えて困ったように微笑む。
「すみません。俺が詳しいのはミステリーなので…ホラーはちょっと」
「そう…それは残念」
「…逆に、神代先輩はそんな話はないんですか?」
首を傾げる冬弥に、今度は類が上を向いた。
「うーん…。…あ、そうだ。母の友達が話していた、オチも意味もない話なんだけれどね…」
そう、類は話し出す。
「その人がまだ実家に住んでいた頃、家の洗濯機が壊れてね。母親が車でコインランドリーに行ったんだが、かなりの量があったから家の中に運び入れるのに迎えに出たんだそうだ。その際少し早かったのかまだ母親は到着していなくてね。彼女は家の前をフラフラしていたんだそうだ」
どこにでもありそうな話に冬弥は少しきょとんとしていた。
まあそんな反応にもなろう。
「暇だなぁと思っていた時、カタン、と音がした。風か何かだろうと目を向けると斜め前の家の駐車場に人影が見えたそうだ。少し近づくと気のせいかシルエットが歪んで見える。顔もなんとなくぼやけて見えて、なんだろうなぁと思いつつ会釈したんだそうだ」
「…え」
「彼女は所謂社畜だったからね、久しぶりの連休で数時間前まで寝ていたし、脳がまだ疲れてたんだろうと思った。ホラーゲームも好きだったからそれの見過ぎかもしれない、とも思いつつね。その後すぐ母親が帰ってきたから荷物を受け取ったが…ものの数秒、次に見た時その人はいなくなっていたんだそうだよ」
にこ、と類は両腕を広げた。
これで終いだとポーズで示す。
「…その方はそれ以降何もなかったんですか?」
「さあ?特に何も聞かなかったけれど…大丈夫じゃないかな」
微笑むと冬弥はホッとした顔をした。
あまり表情には出ないが怖かったらしい。
…と、奥の方でカタン、と音がした。
振り向く冬弥の…肩にちょん、と指を置く。
その、瞬間だった。
「?!!」
「っ?!青柳くん、大丈夫かい?!」
びくっとした彼が数センチ跳び上がり怯えた顔を見せる。
まさかそんな反応だとも思わず、すぐに類は謝った。
「…すまない、青柳くん。まさか君がそんな、怖がるだなんて…」
「…いえ。俺も…自分がそんな驚くとは思ってなくて…」
謝罪する類に冬弥も曖昧に微笑んだ。
珍しいな、と類は彼の頭をなでた。
まるで、背後にきゅうりを置かれた猫みたいだな、なんて思ったりして。
へちょりと猫耳がへたれたように見えるのは気のせいだろうか。
驚かせた猫はアフターケアしてやらないと、と類は微笑んだのだった。


(怪談話も二人にかかれば何のその


ねぇ、知っていた?幽霊はリア充は苦手なんだって!)

祈りの誕生歌(ケンシン・ケンヤバースデー)

いなくなった弟を探す、という依頼を受けてからしばらく経ったある日のことだった。
「…すみません、席を…外します」
ぺこりと頭を下げる彼に、真面目だなぁと苦笑しながらひらひらと手を振る。
気にしなくて良いよ、と声をかければシンヤはふわりと微笑んだ。
…そうは言っても気にならないわけではなくて。
彼が出て行ったドアをそうっと開けた。
隣の部屋で佇むシンヤを見つめていれば彼はすぅ、と息を吸う。
そうして。
聞こえてきた音におや、とヒノキは僅かに目を見開いた。
聞いたことのある澄んだそれは、確かにバースデーソングだったから。
スマホを確認し、ああ、そうか、と思う。
今日は誕生日だ。
…彼、駆堂シンヤの『亡くなった』兄である…駆堂ケンヤの。
仲の良い兄弟だったとシンヤからは聞いていた。
弟であるアンヤと3人兄弟で、特にシンヤはケンヤに連れられてよく遊びに行っていた、と。
バイクの後ろに乗せられてラーメンを食べに行ったり、シンヤにはよく分からないアクセサリーショップやアパレルショップに行ったり。
思い出を語るシンヤは楽しそうで、ヒノキも嬉しくなったものだ。
きっとケンヤはシンヤにとって大切な人なのだろう。
決してシンヤは口にはしないが…ヒノキには分かった。
彼の歌を、表情を見ていれば自ずとわかる。
それは、兄弟を越え、愛しい人に向かう歌声だった。
誕生日を祝福し、感謝を伝えるその歌を聴いていて良いのは自分ではないな、とヒノキはそっと自室に戻る。
形見のピアスを大事に、愛しげに撫でるシンヤに。
早く日常に戻してあげたいな、とそれだけを願いヒノキはパソコンを開いた。

バースデーソングは空に溶ける。


それは、愛しい人への鎮魂歌。

司冬ワンライ・世界猫の日/甘える

今日は世界猫の日、なのだという。
セカイもみんな猫ちゃんなんだよー!とミクが楽しそうに行っていたっけ。
日本の猫の日は語呂合わせだが…これも何か意味があるのだろうか。
そう思いつつ、目の先にいる黒の猫を見つめた。
黒猫というのが不吉の象徴、というのは偏った風習のそれで、別の地域では黒猫は幸せを運ぶと言われているらしい。
…それは、司も肌で感じていた。
「…司先輩」
少し困ったように見上げる冬弥。
その膝には黒い猫が乗っている。
「…冬弥、どうしたんだ?その猫」
「いえ、あの…普通に座っていただけなんですが…乗ってきてしまって」
「ほう」
「最初は良かったんですが、俺もそろそろ帰らなければいけないというか…」
言葉を濁す冬弥に、隣に座りながら、ああ、と笑った。
人の良い彼は、きっと膝に乗ってきてしまった猫を無碍には出来なかったのだろう。
「猫よ、冬弥の膝が良いのはわかるが、そろそろオレに返してくれまいか?」
ちょん、と司は笑いながら猫の鼻に指を乗せる。
寝ぼけ眼を晒した黒猫はくは、と欠伸をした。
「すまんなぁ、冬弥はオレのものなんだ」
「?!司先輩?」
「猫とて、冬弥の膝を渡すわけにはいかんな」
笑い、猫をよいしょ、と持ち上げる。
意外と簡単に持ち上がり、そのまま自分の膝に移した。
「よしよし。オレの膝で我慢してくれ」
頭を撫でながら言うと黒猫は小さく鳴き、くるりと丸くなる。
野良猫の割に随分と人懐こいようだ。
「…。…司先輩は…」
「ん?どうした、冬弥」
小さく呟かれた己の名前に、司は首を傾げる。
すぐ、ハッとしたように、冬弥が「いえ」と誤魔化した。
だがチラチラと猫を見つめる彼を不思議に思っていたが、それは一瞬だけで。
冬弥を引き寄せ、わしゃわしゃと撫でる。
「?!司先輩?!」
「甘え下手だな、冬弥は!」
「…っ!!!」
「少しはこの黒猫のように甘えても良いのだぞ?」
にこにこと笑う司に、冬弥は戸惑っていたようだが、撫でていた司の袖を引っ張った。
そして。
「…にゃ、あ…?」
こてん、と首を傾げる冬弥。
揺れる猫耳はきっと幻覚。


甘え下手の可愛らしい恋人が、囁かに甘えてくれたこの日と、膝からそっと降りた黒猫に


司は最大級の感謝を、した


(本日、セカイ猫の日!!!)

ワンドロ/部屋・宿題

「なぁんでおれだけしゅくだい多いのー?!」
「あんたが毎日しないからでしょー?!」
少し向こうからぎゃーぎゃーと親子の会話が聞こえて、彰人はふと顔を上げた。
よくある親子のそれに彰人も、隣にいた冬弥も柔らかい笑みを浮かべる。
「小学校の時は宿題ギリギリまで溜めてたな、オレも」
「…彰人らしいな」
くす、と笑う冬弥に彰人はムッとした。
「冬弥はどうなんだよ」
「?俺か?俺は初日には全て終わらせていた。ピアノやバイオリンの練習に支障が出るからな」
「…は…?」
予想外のそれに彰人はぽかんとする。
大量にある宿題を初日に終わらせるとは…。
流石冬弥だ、出来が違う。
「その時の癖で今も初日に終わらせてしまうんだが…彰人はどうなんだ?」
「…あ?」
こてんと首を傾げた冬弥に思わず動揺してしまった。
「もう8月に入った。計画通りに行けば宿題は終わっているはずだが…彰人?」
「…やぁ、今日もあちぃなぁ……」
あはは、と笑う彰人に、冬弥の表情が冷めていく。
やっべ、と思ったのも後の祭りで。
「…彰人、逃げるな」
絶対零度のそれに、彰人は、はい、と言うしかなかった。


「…こんにちは、お邪魔します」
「あ、冬弥くんだ!いらっしゃい。うちのバカがごめんねー?」
ケラケラと笑う絵名を彰人は睨む。
だが絵名は気にも止めず、「今日は親もいないし、私も作業するから全然気にしないでね」と、手を振って階段を上がって行った。
「…良いお姉さんだな」
「……」
にこ、と微笑む冬弥に彰人は嫌そうな顔をする。
色々言いたいことがあったが全て飲み込んだ。
「さ、やろう、彰人」
部屋に招き入れるや否や、冬弥はバサバサと参考書を取り出す。
「お前…」
「?なんだ??」
「…何でもねぇよ」
はぁ、とため息を吐き、彰人はあまり手を付けていない宿題を机に置いた。
こうなった冬弥は本気だからである。
ふと、傍らに置かれた小さなバックが気になった。
まだ勉強モードになれていないのも大きい。
「なぁ、あれ何が入ってんだよ」
「ああ、あれは泊まりセットだ」
「へえ…泊まり…。…は??」
何でもないことのように言う冬弥に彰人はぽかんと見つめてしまった。
それに、冬弥はきょとんとする。
「なんだ?今日中に終わると??」
「…いや……」
「父さんになら既に報告済みだ。…友だちの家で勉強してくる、と」
「…お前、それ…」
淡々と言う彼に、彰人は息を吐き出した。
どう聞いても彼氏の家に初めて泊まる彼女の言い訳ではないだろうか。
「問題があるか?お姉さんは別に泊まっても大丈夫と言ってくれたが」
「問題しかねぇだろ…!」
深い息を吐き出し、頭を抱えた。
何故絵名と連絡を取り合っているのだとか、部屋の家主には断りなしか、とか、言いたいことは山ほどあったが全て飲み込む。
その代わりににやりと笑った。
「…なぁ、終わったらご褒美くれよ」
「…分かった。…終わったら何でもお前の言う事を聞いてやる」
「…言ったからな?」
「男に二言はない」
きっぱりと言う冬弥は、こうなったらガンと譲らない。
それを知っていて彰人は言質を取った。
やるか、とシャーペンを握る。

この夏、彰人は生まれて初めて5時間で全ての宿題を終わらせる経験を、した。



「あっ、彰人!冬弥くん良い子よね。持ってきてくれたチーズケーキも美味しいし。いいなぁ、私も冬弥くんみたいな弟が欲しかったなぁ」
「……。…冬弥はオレのだぞ」

類冬ワンドロ・わたあめ/お祭り

どこか彼がしょんぼりしている気がして、類はおや、と首を傾げた。
感情が表情に出ない冬弥だけれど、今日はなんだか分かりやすく落ち込んでいる気がする。
「やあ、青柳くん。どうかしたかな」
「…神代先輩」
ひらりと手を振ると彼は曖昧に微笑んだ。
「もしかして夏バテかい?随分元気がなさそうに見えるけれど」
「…そう、ですか?」
類の指摘に冬弥はきょとんとする。
どうやら自覚はないらしかった。
「一応元気なつもりなんですが…」
「そうかい?僕にはしょんぼりしているように見えたからね。勘違いならすまない」
にこりと笑うと冬弥は何かを思い出したのだろう、ああ、と言う。
「この前、彰人と一緒に夏祭り会場に設置されたステージに出たんです。その時初めてお祭り、というものに行ったんですが…」
「?楽しくなかったのかい?」
あまり脈絡が見えず、そう首を傾げた。
「いえ、とても楽しかったんですが、その…わたあめ屋さんが思ったものと違ったというか…」
困ったような冬弥に、今度は類がああ、と笑う。
実は冬弥は文化祭の出し物でわたあめ屋をやったようなのだが、形がウサギだったりクマだったりととても凝った形だったのだ。
彼は夏祭りにも文化祭と同じクオリティを望んだらしい。
「うーん、飴細工ならともかく、あまり綿飴では見かけないかもね」
「…そう、ですか…」
「…でも」
にこ、と笑い類は自身のスマホを見せた。
覗き混んだ冬弥は目を見開く。
そこには、類自作のわたあめ機が、あった。
「もし君が良ければ、だが、2人きりの夏祭りをしないかい?他にも色々あるんだ」
「…!良いんですか?」
「もちろんだとも!」
嬉しそうな冬弥に類は頷く。
彼のために、2人きりのお祭りを。

(それは、綿あめのように甘く儚い、時間)

浴衣デートをしませんか

ふぅ、と類は舞台から降りて空を見上げる。
今日のショーも大成功、と言って良いだろう。
お疲れ様ぁ!と声が飛んだと思ったら、スマホからバーチャルシンガーの鏡音レンがひょこりと顔を出した。
「やあ、レンくん。見ていてくれたのかい?」
『もっちろん!ほら、類くんが用意してたドローンにモニターが付いてたでしょ?あそこから見えるんだよー!』
えっへん!と胸を張っていたレンが、そうだ!と声を上げる。
『お客さんの中に、あの子がいたよ!ほら、結婚式の時の…!』
「…結婚式…って」
何故だが嬉しそうなレンに類が聞き返そうとしたその時だった。
「…あ、類。青柳くん、来てたけど…」
『そうそう!青柳くん!!』
「…レン、見てたんだ?」
顔を出した寧々にレンが言う。
特に驚きもせず微笑む寧々にレンと自分のスマホを託し、類は外に出た。
あたりを見回すとツートンカラーの髪が道の先を曲がろうとしているのに気付く。
「…っと、危ない危ない」
せっかく来てくれたのに会えないところだった、と類は微笑み、とん、と塀を超えた。
少し道幅が狭いそこを通り抜け、穴をくぐる。
「よっ…っと。…やあ、青柳くん」
「?!神代先輩?!」
「酷いじゃないか。声もかけてくれないなんて」
出た先で冬弥と出くわし、にこりと笑えば冬弥は驚いた顔をした。
「…すみません。お着替え中かと」
「まあ、せっかくだし、今日はこのままでいるつもりだよ」 
謝る冬弥に笑みを浮かべ、類は腕を持ち上げる。
風に袖が揺れた。
「…似合ってます、先輩」
「ありがとう、青柳くん」
素直に褒めてくれる冬弥に類は微笑む。
今日の演目は和物だったので、類も浴衣を着ていたのだ。
フェニックスワンダーランド自体がサマーフェスティバル期間で、キャストは皆浴衣を着用しているせいもある。
「青柳くんもどうだい?」
「俺も、ですか?」 
「ああ。君さえ良ければ、だけどね。まだ予備の浴衣もあるし」
類は笑い、手を差し出した。
まるで、プロポーズするが如く。
「せっかくだし、君とこのまま浴衣デートをしたいのだけれど。…どうだろう、青柳くんの時間を少し僕にくれないかい?」
パチン、と、ウインクする類に、冬弥は驚いたようだったがすぐ小さく微笑んだ。
そうして差し出した手にそっと自分の手を乗せてくる。
まるで、逃避行するみたいだなと類は笑った。
「…俺の時間…先輩にお渡しします」



さあ、行こう。

いつもと違う服で、いつもと違うワンダーランドに!!


「…あの、先輩…?」
「ちょっと待ってくれ、青柳くんに似合う浴衣はまだあるはず…!」
(プランナーの血が騒いだ類による、浴衣ファッションショーが1時間ほど開催されたのは…また別の話)