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ホワイトデーザクカイ♀
「鬼ヶ崎!」 部屋に帰ろうとする彼女を呼び止める。 ふわりと、長い黒髪が揺れた。 「?なんでぇ、忍霧」 「…これを」 疑問符を浮かべる彼女に小さな包を手渡す。 「…こいつァ」 「バレンタインのお返しだ」 「…。…相変わらず律儀だねぇ…」 ザクロのそれに目を見開いたカイコクがくすくす笑った。 一頻り笑ってみせた彼女が、「ありがとさん」と柔らかい笑みを見せる。 「ほう、ヘアゴムかい」 「ああ。以前に髪を纏めたい、と言っていただろう?それに、貴様は甘いものを好まないからな」 目を細めたカイコクにザクロはそう言った。 彼女は甘いものはあまり好きではないらしく、かといってせんべいなどを贈るのもホワイトデーとは違う気がして、結局ヘアゴムになったのである。 梅の花が刺繍された、可愛らしいくるみボタンのヘアゴム。 これならば彼女が着けている鬼の面の邪魔をしないだろう。 「少し、可愛すぎやしないかい?」 「そんなことはない。貴様は充分可愛らしいからな」 「…そんなこと言うのはお前さんだけだぜ、忍霧」 自信満々に言うザクロに、カイコクが呆れた顔をした。 彼女はそう言うが、カイコクは充分に可愛らしいのだ。 …それこそ、嫉妬して【こんなもの】を贈るくらいには。 「…知っているか?鬼ヶ崎。恋人がヘアゴムを贈る、その意味を」 「…ぅ、え?」 くっと彼女の髪を引き、ザクロは見上げる。 恋人にヘアゴムを贈る意味は【束縛】。 誰も見ないで、こちらだけを見てほしい…と。 「…忍霧…?」 「俺だけを見ていろ」 揺れる、綺麗な髪に口付ける。 醜い嫉妬と独占欲を込めて。
彼女はモテるから、これくらいの牽制は許してほしいと、ザクロは笑った。
(ヘアゴムを贈る、意味。
それは、異性からの誘惑に乗らないでという切な願い!)
ホワイトデーザクカイ
すぅ、はぁ、と彼の部屋の前で深呼吸をする。 本日3月14日、所謂ホワイトデーだ。
「…鬼ヶ崎!いるか!」 「…はいはぁいっと…。…なんでぇ、こんな遅くに」 ザクロの呼びかけに対し、ゆるい感じで出てきたカイコクはきょとりとこちらを見つめた。 その彼に、隠していたものを差し出す。 「…こりゃあ」 「今日は、ホワイトデーだから、な…」 ザクロが差し出したのは小さな花束であった。 ベゴニアとスターチス、という変わった取り合わせだが、彼はふは、と笑ってみせる。 どうやら意味を知っていたようだ。 「…まあ、毎年熱烈なこって」 「…っ。俺は、いつだって本気だ」 可愛らしい笑みのカイコクに、ザクロは真面目な目線を送る。 ベゴニアの花言葉は愛の告白、スターチスの花言葉は変わらぬ心。 赤く凛としたベゴニアはカイコクによく似ていた。 それを、自分の瞳と同じ色のスターチスで囲ったのは意味がある。 「俺の愛の告白は、いつも変わらない。…それを、伝えたかった」 「…忍霧」 「…すまないな、夜遅く、に…?!」 立ち去ろうとするザクロの服を、カイコクが引っ張った。 勢い良く振り返れば、彼が、まあなんだ、と語彙を濁す。 「…茶ァくらいなら…淹れてやらんでもねぇ、けど…?」 「…貴様、それは誘っているのか?」 「…。…おやすみ」 カイコクの精一杯のお誘いに首を傾げてしまい、彼は部屋に入ろうとしてしまった。 慌ててその手を引く。 「ま、待て!…貴様の淹れた茶が飲みたい」 「…。…特別、な」 まっすぐな目を向ければカイコクがふいと目を逸らした。 今日はとことんザクロに、甘いらしい。
なんと言っても今日はホワイトデー、なのだから!
(ちょっぴり自分の気持ちに素直な、特別な日)
ホワイトデー類冬
「…やあ、冬弥くん」 「…!神代先輩」 図書室の扉を開けると彼が小さく微笑んだ。 ここで彼と会うのも日課と化してしまった。 …だが。 「…先輩、あの…これ」 冬弥がおずおずと何かを差し出してくる。 シンプルなパッケージのそれは、シンプルが故に可愛さを出すのが難しいんだよ!と瑞希が言っていた店のもので。 「俺のお気に入りの店で買ったコーヒー風味のチョコです。…マカロンと迷ったんですけど、俺が好きなものを知ってほしくて」 「ふふ、ありがとう、冬弥くん。…なら、僕からはこれを」 冬弥からのそれを受け取り、類は微笑んだ。 彼に手渡したのは…スマホサイズのシンプルなコントローラー。 え、という顔をする冬弥に「押してご覧」と促す。 半信半疑、といった様子の彼は言われた通りにそれを押した。 「…ロボット?」 図書室の奥からやってきた小さなロボットに冬弥は首を傾げる。 規則正しく歩みを進めるロボットは手にバルーンで出来た花束を抱えていた。 「ふふ、僕自慢のロボットとバルーンアートだよ。受け取ってくれるかい?」 「…ありがとうございます」 微笑んだ冬弥が受け取ろうと手を伸ばした…刹那。 「?!」 驚く冬弥の目の前でバルーンが割れる。 出てきたのは本物の…12本の赤いチューリップから出来た花束だ。 「…こ、れは」 「勿論、僕の気持ちだよ。…冬弥くん」 目を見開く冬弥に、良い顔をするなあと類は笑みを向ける。 赤いチューリップの花言葉は愛の告白。 そして、12本の花束の意味は。 「…ホワイトデーというより、プロポーズみたいですよ、先輩」 「僕としては、そのつもりなのだけれどね」 くすくすと笑う冬弥にそう囁いてキスをする。 胸に抱えられた、真っ赤なチューリップが小さく揺れた。
君が愛をくれたのだから返さなくては。
もらったものにはお礼を。
もちろん、君にだけ特別、3倍にしてね!
ワンライ司冬・ホワイトデー/甘い罠
「…よし、こんなものだな」 目の前に広がる光景に、司は満足げに頷いた。 キッチンにはクッキー生地が伸ばされた状態で置いてある。 オーブンの準備もばっちりだ。 後は…と思ったところで玄関チャイムが軽やかな音を立てる。 「…おっ、来たな」 呟き、玄関に向かった。 ドアを開ければふわりと微笑む冬弥が立っていて。 「良く来たな、冬弥!」 「いえ。…今日はどうしたんですか?」 招き入れようとすれば冬弥が純粋な疑問をぶつけてくる。 まあ、突然「うちに来い!」なんて言われればそうもなるか、と思った。 「ああ。一緒にクッキーを作ろうと思ってな!」 「クッキー…ですか?」 「そうとも!冬弥は、クッキーが好きだろう?」 「はい。…でも、なんで…」 司のそれに首を傾げる冬弥に、今度は司が疑問符を浮かべる。 「何故って…今日はホワイトデーじゃないか!」 「…!」 「オレは、冬弥からカップケーキという愛を貰ってしまったからな!…そのお返しだ」 ニッと司は笑ってみせた。 一ヶ月前に冬弥と、この場所で作ったのはカップケーキ。 誰か他の人にあげるかと思っていたから少し複雑な気持ちで作る手伝いをしていた司に、冬弥は渡してくれたのだ。 自分の、気持ちだと言って。 それに応えなければ男として、スターとして廃るというものだろう。 「…えと、ありがとう…御座います」 「なぁに!オレは冬弥の先輩だからな!!」 複雑そうな笑みの彼に、司は、ハーッハッハッハッ!と高らかに笑った。 冬弥の複雑そうな笑みの、その意味は知っている。 だから、早く、と手を引いた。 「あ、あの…先輩?」 「今日のクッキーはきっと美味しいぞぅ!…何せ」 「…!」 「冬弥が好きなものを詰め込んだ、スペシャルクッキーなのだからな!」 得意気に司はキッチンのドアを開ける。 そこにあるのはチョコを練り混んだコーヒークッキー生地だ。 驚く冬弥に、司は笑う。 「クッキーには友だちでいようと言う意味があるのだろう?この前冬弥が言っていたではないか。…だが、オレは冬弥が好きなものをあげたかった」 「…司先輩」 そう言って司は冬弥にエプロンを着けてやった。 ほら、と星型を渡す。 「それにな、冬弥」 まだ混乱している冬弥に司はそっと囁いた。 目が開かれるのが可愛らしい。 「友だちに隠れた秘密の恋人、というのも悪くないだろう?」 いたずらっぽく司は笑う。 クッキーには、友だちでいよう、という意味があるそうだ。 サクサクという軽い食感、大量に作れるという手軽さが意味しているらしいが…くだらない、と思う。 冬弥がクッキーを好きなのだから、それをあげたいと思うのは恋人としての心情ではなかろうか? 「…先輩…」 「オレの愛を込めたクッキー、受け取ってくれるだろう?」 お前の愛のお返しに、と司は笑んだ。 差し出すクッキー型を、冬弥は、はい、と受け取る。 柔らかな、甘い笑顔で。
キッチンの扉が閉まる。
そういえば、最初に好きになったのはどちらだったのだろう、と疑問が生まれるがすぐに放棄した。 冬弥が幸せそうな笑顔を向けてくれるならば、それで!
(司か、冬弥か。
無意識な甘い罠にかかったのは果たしてどちら?)
ワンドロ・桜/ホワイトデー
『今年も桜の季節がやって参りましたが、やや開花時期は遅く…』 そこまで聞いて彰人は立ち上がる。 行ってきます、と言いかけた所で、2階から「彰人!」と呼ぶ声が降ってきた。 「…んだよ」 「お姉ちゃんに向かってその態度は何。…ね、ス○バの桜タンブラーとシフォンケーキ買ってきて」 睨んだもののそれを物ともしない絵名があっさりと言う。 嫌な顔をしてみせてもどこ吹く風で。 「はぁ?なんでオレが」 「いいでしょ?…どうせ彰人のこと、相棒くんから貰ったバレンタインのお返し、何も考えてないに決まってるんだから。スタ○の春ギフトなら贈り物にぴったりだしね」 「だぁから、勝手に決めんなっつー…!」 「んじゃ、よろしくー」 声を荒らげる彰人に、絵名はひらひらと手を振る。 こうなれば行かなければいけないのは確定項だ。 仕方ない、とため息を吐き、彰人は玄関に向かった。
春だ、と言えどまだ少し肌寒い。 厚手のコートにすればよかったと襟を立てながら街中を見渡せば、ブルーのリボンが彩られていて。 そういえばホワイトデーなんて行事もあったな、と思う。 「…彰人」 待ち合わせ先には冬弥が先に来ていた。 駆け寄ると彼は僅かに笑みを浮かべる。 「わりぃ、待たせた」 「俺も今来たところだ」 心配するな、と言わんばかりの冬弥にまったく、と息を吐いた。 二人並び、目的地に向かおうとした彰人を冬弥が止める。 「…寄りたい所があるんだが」 「?珍しいな、どうした?」 冬弥のそれに思わず首を傾げた。 彼なら用事くらいは待ち合わせの前に済ませてくる気がするのに。 「美味しいパンケーキの店があるんだ。桜色が鮮やかで、ベリーが3種乗っているらしい」 「…ん?」 「…彰人と、一緒に行きたいと思って色々調べていたんだが…迷惑だっただろうか?」 こてり、と冬弥が首を傾げる。 揺れる髪に可愛いな、と思った。 「まさか。オレは嬉しいけど、なんでまた…」 その問いに冬弥はきょとりと目を瞬かせる。 「今日はホワイトデーだろう?」 簡単な答えになんだ、冬弥も同じだったか、と彰人は笑う。 彼もちょっとしたホワイトデーのデートプランを考えていたようだ。 「んじゃ、オレはお前にコーヒーとアフォガードのパンケーキ、ご馳走してやる。バレンタインのお返しに、な」 「…!彰人」 「オレも同じこと考えてたんだ、お前ばっかり良い顔させてたまるかよ」 ニッと笑い掛ければ、冬弥は、そうか、と小さく微笑む。 それは確かに幸せそうで。 こういうのもたまには良いか、と、そう思ったのだった。
少し早い春の、ちょっぴり非日常な甘い話。
本日、ホワイトデー前夜!
「あっ、○タバ」 「…?寄りたいのか?パンケーキ食べたのに?」 「…色々あんだよ…」
類冬ワンドロ・花壇/プランター
先程植え替えたばかりのプランターを両手に持ち、類は教師から指定された場所に向かった。 と、意外な人物を見かけておや、と思う。 神山高校の花壇、赤紫の花が咲き誇るそこにに何やら重そうな本を持って立っている男が一人。 「やぁ、冬弥くん」 「…神代、先輩」 声をかけると彼はふわりと微笑んだ。 「ふふ、こんなところで君に会えるとは嬉しいねぇ」 「?…そうでしょうか」 「ああ。君とは図書室くらいでしか会わないからね」 こてりと首を傾げる冬弥にそういうと、なるほど、と言う。 学年が違うせいもあり、彼が所属している図書委員の担当日くらいにしかあまり会えないのだ。 外で会うなんて稀である。 「何をしていたんだい?」 「…花を…サクラソウを見ていました」 類のそれに冬弥が微笑んでそう返した。 彼の前で揺れていたのは赤紫色のサクラソウだ。 「ああ、今年は綺麗に咲いてくれたからね。冬弥くんが見てくれて嬉しいよ」 「俺、この色好きです」 微笑む類に笑みを見せながら唐突に冬弥が言う。 赤紫は類のメッシュとよく似ているが…あまり深い意味はないんだろう、と「そう」と言った。 単純に彼が好きなのがこの色なのだ、と言い聞かせて。 「最近良く目につくようになってしまって…。後はサクラソウ自体も好きです」 「…へぇ?」 「…俺の想いとよく似ているので」 「…ん??」 綺麗な笑みを浮かべる彼に類は首を傾げた。 だがそれにはお構い無しで、それでは、また、と冬弥が会釈をする。 類の頭の中は先程の言葉でいっぱいで。 なぜ、彼は…そんなことを? 「…?」 ふ、と彼が去った花壇の隅に本が置かれていたのに気付く。 プランターを地面に置いてから拾い上げた。 丁寧に栞の挟まれたその本は植物図鑑で。 栞の先、サクラソウのページには原産国や開花時期に加えて花言葉も添えられていた。 「…あぁ、なるほど。やられたねぇ…」 類は独りごち、口角を上げる。 サクラソウ、その花言葉は…【初恋】。 肩を揺らし、類はパタンと図鑑を閉じた。 さて、彼に花言葉のお返しに行かなければ!!
(サクラソウが揺れる先、彼の花言葉が実ったのかは…みんな知っている事実だと思うけれどね!)
Q、冬弥の好きなところは?/類冬
それを聞いてきたのはそういうことにあまり興味がないと思っていた寧々で。 類は思わず金の目を見開いた。 「…どうしたんだい?急に」 「別に?ただ、同じクラスだけど、好きになる理由がよくわからないな、と思って」 サラリとそう言う彼女に類は苦笑する。 寧々はそういうところがあった。 今も本当にただただよく分からないのだろう。 …類はショーに関係する人物しか関わってこなかったのだから。 「ショー以外で好きになったの、あの人が初めてでしょ」 「…そうでも…」 「ある。幼馴染舐めないで」 ぴしゃりと言われ、類は肩を竦めた。 まったく、寧々には敵わない。 「で?あの人のどこが好きなの?」 「…そうだねぇ。…じゃあ幼馴染の特権で教えてあげるとしよう」 ウインクをする類に、寧々が聞かなければ良かった、と嫌な顔をした。 どうせこうなるのは分かっていたのだから。
類はショーにしか興味がないことも。
存外、花みたいな綺麗なものが好きなことも。
「僕は彼の目が好きだよ」
…その言葉の意味も、分かってしまった寧々が小さくため息を吐き出した。
(おやおや、これでも猫も食わない惚気話のつもりなのだけれどね!)
Q、冬弥の好きなところは?/司冬
無邪気に聞いてくる妹の咲希に、司は首を傾げた。 随分唐突だな、と思っていれば、彼女はニコニコ笑いながら、「気になるんだもん!」と言う。 「そうか?身内の恋愛話だぞ?」 「いーの!!だって、とーやくんってステキなとこたっくさんあるじゃない?その中でもお兄ちゃんがどこを好きになったのか知りたくて!」 「…まあそれは一理あるな」 司のそれに咲希はうんうん!と頷いた。 彼女もただ興味本位で聞いているわけではないらしい。 ならば真剣に答えてやるのが道理だろう。 冬弥の好きなところ。 幼い頃に会った時から変わらない、それ。 「そうだな。…一つ、挙げるとすれば」 「すれば?」 咲希が首を傾げる。 司はへにゃ、と笑い、立ち上がった。 お兄ちゃん?!と驚いた声を聞きながら司は自室に帰る。 部屋を出る前、一つ小さな笑みを零して。 「オレは冬弥の目が好きだ」
咲希であろうとその理由は教えるわけにはいかない。
幼い頃から胸に秘めた、それは小さな恋心。 (そんなキレイなものでないことくらい、司は知っているけれど!)
小さく笑みをこぼす。
だってそれは。
「オレだけの宝物だから、な」
Q、冬弥の好きなところは?/彰冬
絵名に唐突に聞かれた彰人は、はぁ?と眉を顰める。 なんだ急に、と言わんばかりのそれに、姉である絵名はだからぁ、とペンタブを振った。 「アンタと相棒くん、全然似てないじゃない?タイプ的に。だから、どこが好きになったのかな、って」 「冷やかしかよ、ぜってぇ教えねぇ」 「ちーがうわよ。冷やかしなんかで弟の恋路に首突っ込むと思う?藪蛇にもならないじゃない」 あっさりと言われたそれに、彰人はそれもそうかと嫌そうな顔を崩す。 この姉はこういう帰来があるのだ。 変にいじられるよりは良いかと思うのだが…では一体なんだというのか。 「サークルの子がねー、人はどこを一番に好きになるんだろう、とか言うから」 「あ?何、体の部位の話?」 「まー、そうね。声、とかもその人の一部と考えればそうだろうけど…」 彰人のそれに絵名は少し考えたように言う。 絵名なりの譲歩だろうか、なんとなく癪だった。 だから。 「んじゃあ、目、だな」 それだけを告げ彰人は部屋を出る。 「へ?あ、ちょ、彰人?!」 絵名の声を無視して階段を降りた。 彼女には教えてやらない。 彰人が冬弥の目が好きな理由なんて。
「手に入んなきゃ欲しくなる。…そうだろ?」 小さく笑い、彰人はドアを開ける。 初めて会った時の彼を思い出しながら。
手に入れたそれを離してやるものか、と空に向かって口角を…上げた。
砂糖の日
6時間目が終わる頃、何か口寂しいなぁと思っていた。 そんな日に限っていつも持っているラムネがない。 いっそ購買にでも行ってやろうかと思ったが品揃えがあまり宜しくないのも知っていた。 我慢するしかないか、とぼんやり廊下を歩いていた…刹那である。 「…神代、先輩?」 「…おや、君は」 柔らかい声に振り向いてみれば青柳冬弥が首を傾げていた。 本をいくつか抱えていたから、図書室にでも行くつもりなのだろう。 「今日は委員会かな?」 「いえ。…自分の用事を済ませに行こうかと」 「なるほど。…良ければ、手伝わせてくれると嬉しいな」 ニコリと笑い、類は冬弥が抱える本を何冊か取った。 ありがとう御座います、と冬弥が笑む。 何の事はない会話を交わし、図書室に本を運んだ。 「…っと、ここで良いかい?」 「…はい、ありがとう御座います。…あの、これ」 本をカウンターに置いた類に、冬弥が何かを差し出してくる。 彼の綺麗な手に乗っているのは透明なフィルムに包まれた金色のキャンディ。 「ふふ、別に良いのに」 くすくす笑いながら、ありがとう、と言い…口を開く。 きょとりと目を丸くした冬弥は慌てたように包み紙を剝がしてキャンディを持ち上げた。 「…ひ」 キャンディをつまみ上げられたそれが類の口に近づいてきた途端、その手首を掴み指ごと口に含む。 ちろりと彼の指を舐め、キャンディを口に入れた。 「…っ!!」 「…ありがとう、冬弥くん」 微笑むと冬弥がくん、と服を引く。 仕方ないなぁ、と類はキャンディが入ったままの口を彼のそれに寄せたのだった。
さて、今日が何の日が知ってるかい?
調べてご覧、今日は
( の日!)
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